二度、天使様を見たことがある。

一度めは、母に「私はあなたの本当の親ではない」と突然告げられた日の晩、お風呂で声を殺して泣いていた時だった。風呂場の磨り硝子の窓越しに金色に輝く人影あり、体を拭いて慌てて外へ出てみたらば、金色の羽と金色のリップクリィムが花壇の端に落ちていて、私は天使様が慰めに来てくれたのだと確信し、小躍りした。

二度めは、あの猛烈な台風の翌朝、近くの海岸でお化けのような高波を見物していた時、天使様が一等高い波に乗ってサァフィンに興じておられた。波と風を乗り継いで、天使様は空に昇って行った。金色のスウエットスゥツの着こなし方は流石だった。あんなにも清らかで麗しい存在を、神様はどうやってお造りになられたのだろう。天使様は私の理想の殿方だ。

程なくして、天使様が両性具有であることと、シダァやサンダルウッドのような芳香を纏っていることを耳にし、私は彼(もしくは彼女)の虜となった。

今も私は金色の影を探しつづけている。

2019 Hawaii