私には夢があります。

虹色に輝くお城の王女様として生まれた私のもとへ、ジェラール・フィリップにそっくりの執事が毎朝起こしにきてくれます。「王女様、今朝は蜂蜜たっぷりの甘いフレンチトーストをご用意しましたよ」って、とびきりの甘い声でね。

ねっとりとしたモーニング・キスを執事と交わしたら、新鮮なローズマリー・ウォーターで顔を洗いましょ。チェシャ猫のマリィの毛並みは今朝も憎らしいくらいに完璧。生意気だこと。

今日のドレスにはピンク色のローズマカロンがあしらわれていて、ルイーズの新作にしては悪趣味。だけど、嫌いじゃない。ホワイト・アメジストがアクセントのティアラは眺めるだけにしておくわ。特別な儀式のための、特別なティアラだから。

そんな、虹色に輝くお城の王女様としての私の日常を、私は毎日思い描きます。

えぇ、

私の夢が今年も叶わないことは、このあいだ区役所から連絡があったのでちゃんとわかっています。

それでも私は夢を見ます。叶わない事が夢である事を、私は知っているからです。

2018 Berkeley