朝起きたら、痣が消えていた。私の右二の腕の上のほうにあった大きな痣。小さい頃、母にめん棒で殴られてできた大きな痣。

もうひとつは、左脇腹にあった、黒ずんだ紫色した中くらいの痣。高校生の頃、酔っぱらった父にビール瓶で殴られてできた中くらいの痣。

20歳の頃に、付き合っていた彼から灰皿を投げつけられてできた痣もありました。それは少し小さいサイズで比較的お気に入りでした。

夢の中で、私は私に魔法をかけました。全ての、全ての嫌な記憶が消えてしまう魔法を。

全ての、全てのです。

思い出すと胃の下のあたりがきゅうっとなって、おしっこが漏れそうになる、嫌な記憶の全てを。

まずは、それらを大好きなキャラメルラッテに溶かしました。たっぷりのお砂糖と一緒に。少しだけ、シナモンパウダーも振りました。そして私はそれを飲みました。私の嫌な記憶が溶けきった甘いシナモン風味のキャラメルラッテを、 美味しい美味しいと自分で飲み干しました。それはヒーリングとしての儀式。とてもスウィーティーな。

そんな魔法でした。

そんな夢でした。

夢から覚めると痣は消えていたのです。

残念ながら嫌なことはまだ記憶の中にありました。でも胃の下のあたりは、きゅうっとはなりませんでした。魔法は成功したかのように思えた。おしっこは漏れそうだったけど、これは朝の生理現象です。

グッモーニン

新しい私。

それは成功したかのように思えた。

2019