私が200回目の皆既月蝕に産んだマジョラムの娘は、もう4歳になる。
彼女はいつも、しきりに言う。
「ママ、大変だよ! もう時間がないよ! シリウス星のリチャードが音符になっちゃうよ!」
私は言う。
「そうね、あなたの5つ前の人生ではリチャードと仲良しだったものね。
でもね、ここはメビウスの環が支配する地球の裏側。今はここにいるしかないのよ。私があなたを産んでしまったから。
わかるわね、愛しい子」
彼女は不服そうに、ワンピースを裏返してみせる。
生存ナンバーが書かれたワッペンを隠したいみたい。悪あがきのティータイム。
彼女は口笛でリズムを取る。
リチャードに会いたいのね。音符で待ち合わせなんて、なんてロマンチックなんでしょう!
そうよ、いつでも会えるじゃない。
あなたの人生は、いつだってキャンディーボトルと一緒にアカシックの棚に整列してるわ。
ここはメビウスの環が支配する地球の裏側。
なんだって、もう、真っ暗闇。でもね、それは「全てが光り」という意味でもあるのよ。
わかるわね、愛しい子。
2019 April "How to see you as a pentacode"