2019.9.18 BIG ISLAND / The last day

もぬけの殻とはまさにこの事だ。何もかも、全てが絞り出されたようだった。昨夜は帰宅してすぐ、ヘロヘロのまま眠りに就いた。寝ている間、僕は幼少期の辛い時代の夢を見ていた。辛くて悲しくて苦しい、最悪な夢だった。目が覚めると、僕は泣いていた。でも、感情は引きずっておらず、不思議と気分は軽やかだった。ハッキリと、浄化された、とわかった。それは、ウニヒピリ(ハワイ語でインナーチャイルドのこと)の浄化。ケイコさんは「終わらせ屋」なのだそう。ケイコさんのもとを訪れる人は「何かを終わらせる」必要があるのだという。逆に言うと、終わらせるために人はケイコさんのもとを訪れる。ケイコさんは僕を腸洗浄へと導いて、僕の中でいつまでもウジウジと泣いてばかりいたウニヒピリの悲しみの記憶をきっぱりと終わらせてくれたのかもしれない。もちろん、ケイコさんは何も考えずにミカさんと引き合わせてくれたんだろうけれど。

腸洗浄は、それはそれは凄まじい体験だった。下半身素っ裸で分娩台のような台に乗ってお股をおっ広げ、細長いガラスの管をムニュっと肛門に突っ込んで、そこから大腸へとどんどんお湯を流し込む。お湯がいっぱいになったら、ブーーーーーーーーーー、と、外へ排出。それを約1時間繰り返す。腸クレンズセラピストのミカさんがその様子を横で見ながら、腸に溜まっているおウンちゃまが出るたびに「いいじゃーん、すごいじゃーん! すごいの出たよ~♡ やったよ~ えらいえらい~」と、エールを送り続けてくれる。まるで出産。力んで出すあの感じも(もちろん出産未体験ですが)。まさに新たなる生命の誕生。その名はおウンちゃま。かわいい子達がたくさん産まれました。冗談はさておき、ほんと頭の中まですっからかんになる。もう何も考えられない。考える余裕もない。そのあまりの未知の体験に、いちいちぎゃぁぎゃぁ騒いでいたら「こんなに騒ぐ人いない」と呆れられた。待合室で順番を待っていた久嶋君は、僕の叫び声を聞いてさぞ恐ろしかっただろうな…。

腸壁で大切に育てた宿便のおウンちゃま達は、出産(排出)されるとガラスの管を通って流れていくので、自分の目で確認できるようになっている。すごいのが出るたびにミカさんが嬉々として「やだ、すっごいよぉ~、見なよぉ~☆」と、見るのを勧めてくるが、そんな余裕は一切ない。産むのに必死。お願いだから今は話しかけないで。

最後、少し余裕が出てきて、恐る恐るガラスの管を見てみると、管の中を黒いゴマみたいな、細かい石ころみたいな物体がサラサラと流れていくのが見えて、ギョっとした。やだ怖い。あれもおウンちゃま?

腸洗浄を終えた後は本当に足がヘロヘロした。立つのも歩くのもつらい。だるい。でも、なぜだか気分は清々しい。ものすっごーーーーーーーい下痢のあと、腸の中に何もない、すっからかんな軽さがある、あの感じ。なにこれ。すごい体験。文字通り、生まれ直し。分娩台に乗って産んだのはおウンちゃまじゃなく、新しい自分自身でした。めちゃくちゃ怖かったけど、終わってみたらまたもう一度やれそうなこの感じは、やっぱり出産に似ている?

少しずつ感覚が戻ってきた頃、交代で分娩室に入った久嶋くんの施術を終えて、ミカさんが待合室に戻ってくる。ミカさんにさっきの謎の黒ゴマの話しをしたら、「それたぶん虫の卵だよ。kai君はたぶん腸に寄生虫がいたんだね、だって虫っぽいの流れてたもんね」と。

きゃーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!

卒倒しそう。

でも、話しを聞いてみると、よくある事なのだそう。日々の生活や食事で自然と虫は身体の中に取り込まれていて、どんな人でも多かれ少なかれ腸に虫を飼っているらしい。それを聞いてちょっと安心する。が、問題は、その虫が腸の中で大きく成長してしまった場合。腸が弱っていると、腸の中が虫の住処になって栄養も全部虫に取られてしまうそう。そしてさらには思考や行動までが支配されてしまって、変に食べ過ぎたり、変に落ち込んだり、自分の本来の意思に反した行為を繰り返してしまう。だから、虫に支配されないよう腸を健康に保つ事はとても大事で、それには腸洗浄で宿便を排出したり、直接虫を流したりするのが、1番早い方法なのだそう。

なんかね、実はあたし、腸に虫がいる気がしてたんです。なぜかはわからないけど…。直感ですね。この直感は当たってほしくなかったけど、当たりましたね。あたしのインスピレーションの正確さ、こんな事で実感したくなかったわ。ミカさん曰く、虫を飼ってる人は腸洗浄をものすごく怖がって、全力で拒否するのだそう。それは、自分が拒否してるんじゃなく、その虫が腸洗浄を回避しようとしてるんだと。なんだか納得。もしかしたら僕は今回の腸洗浄で成虫と一緒に虫の卵までも流せたのかもしれない! バンザーイ!!!

そして宿便には古い記憶も同時に宿っている。その晩見た辛い夢の中で、古い記憶とも一気にサヨナラできたのだと思う。ケイコさんが終わらせたのは、僕のウニヒピリの悲しみと、虫ちゃんとの蜜月な日々でした。ありがとう、ウニヒピリ。ありがとう、虫ちゃん。もうあたし1人で生きていけるからね…。

施術を終えた久嶋くんがヘロヘロになって戻ってくる。ヘロヘロなのに、まるで湯上がりたまご肌。ぽっとホッペがピンク色に染まっていて、顔の皮が1枚つるりと剥けたように、ツヤツヤになっている。受ける前と顔も肌も表情も全然違う!! こんなにか!!!! 久嶋君も、いつも自分でやっていた腸洗浄とは次元が違ったようで、あまりの体験に言葉が出てこないよう。ハワイ島で2人で受ける生まれ変わりの儀式。その儀式がまさか分娩台に乗っておウンちゃまと虫ちゃまを出産する事だったなんて…。

帰りのお支払いの時、やけに気になるティンクチャーボトルがカウンターで販売されていて、手にとって見てみても英語でよくわからず、これは? とミカさんに聞くと、なんと虫下しの薬なのだそう。やっぱり。今の自分に必要なんだ。今回の自分へのハワイ土産は、まさかの虫下しティンクチャー。まさに奇跡の島、ハワイ島。 最後、ミカさんがギュぅっとハグをしてくれる。ミカさんの腕の中がものすごく温かくて、このハグまでが施術なんだな、と思った。

翌朝は意外と普通に起きる事ができた。辛い夢は見たが、もっと熱が出たり、身体がだるくて起き上がれなかったりするかと思ったけど。久嶋君も割と普通に起きられたようだった。

今日で帰国。この場ともお別れだ。なんと濃密な日々…。ハワイ島は4泊、“The village” に至ってはたったの2泊。なのに、ほぼ原液の濃度でハワイ島を堪能できたと思う。ハワイ島在住の人でもなかなか無い過ごし方ではなかろうか。それもこれも、ケイコさんのお陰です。本当にありがとう。本当に。

最後、一階のスタジオで、3人で輪になってメディテーションをする。瞑想中、いろんなヴィジョンが浮かんでは消えた。それらのヴィジョンの中には、この旅で何かを「終わらせた」僕たちの未来があったかもしれないし、なかったかもしれない。いずれにしても、未来は完璧に進んでいくのだ、と思えた。先が見えなくて不安で、不安で不安で仕方なくて、未来を知ろうとばかりしていた。でも、今回のハワイの旅では何もスケジュールを決めずとも、未来を決めなくとも、全てが完璧に進んでいった。リリウオカラニ公園のバニヤンツリーの下で、チャネラーのユウコさんに「宇宙にお任せ。宇宙に委ねる。それを学ぶためにハワイ島に来たんですよ」と言われた。委ねるって、怖い。信じるって、怖い。だって、世界は怖いから。怖いことが起きる、それがこの世の中だから。そんなに甘くないから。頑張らないといけないから。でも、それはきっと前世からの記憶。幼少期の記憶。宿便の記憶。世界は完璧にできている。宇宙は完璧に仕組まれている。完璧な状態のとき、全てが優しい。怖いことはひとつも起きない。ハワイは全てが優しかった。怖いことなんてひとつも起きなかった。だって、ハワイでの時間は、全てが完璧だったから。

瞑想を終えて、ケイコさんと長いハグをする。あ、またケイコさん、僕たちの何かを「終わらせた」のかな? それくらいの、長い長いハグ。そして女神のような優しい笑顔で「また来てね」と言ってくれた。今回の旅では、いろんな人から何度も「また来てね」を、言ってもらえた。大好きなバークレーの旅を思い出した。

空港に向かってサドルロードを突っ切っていくと、途中、マウナケア山の麓にデモ隊の車がたくさん停まっていた。車を走らせながら僕と久嶋くんでマウナケア山に愛のエナジーを送る。そして、ペレに感謝の気持ちを伝える。

ありがとう、ペレ。あなたにもらったたくさんのギフトを言葉にするにはまだ少し時間がかかりそうです。今わかっているのは、僕達はハワイが大好きになった、という事。また来ます。また来ますね。また呼んでください。

See you again, Hawaii.

See you soon, Pele!

最後まで読んでくださってありがとうございました!

MAHALO!