ミモザだと思って飲んだら、それは月の蜘蛛の絞り汁だった。

ほんの少しキャラウェイの味がしたのはそのせい。

飲み干すと、私の体の穴という穴から糸が吹き出た。

その糸でぐるぐると巻かれ、私は捕獲された。

私はこのまま月に還されるのだろうか。

2020 Japan

It is fate that we can not together

永遠に交わることのない運命の赤い糸

2020

圭子「ねぇ、あんたニンニク食べた?」

進之介「食べてないよ」

ゆかり「食べてるでしょ。超臭いもん」

進之介「食べてないって」

浩二「お前さっきキムチ食ってたじゃん」

圭子「ほらね」

進之介「食ってねぇって!」

ゆかり「ちょっと大声出してツバ飛ばさないでよ、臭いんだから」

進之介「マジで食ってねぇんだって!」

絵里子「ねぇ」

進之介「いやほんとに俺食ってね…」

絵里子「ねぇ!」

一同、絵里子を見やる。

絵里子「私、太陽が隠れて夜になったらいよいよコウモリになるね」

圭子「やだそうだった! 今日は絵里子がコウモリになって消える日だったね」

ゆかり「臭すぎて忘れるところだった。絵里子、コウモリになっても元気でね」

絵里子「コウモリになって私が闇をまるごと連れていくから、あなた達は安心して光を生きてね」

浩二、泣き出す。

圭子「ちょっと泣かないでよ〜、笑顔で見送ろうよ」

浩二「ありがとう… ありがとう… 絵里子、お前ほんといい奴だな」

進之介「なぁなぁ、最後にひとことだけ言わせてくれ。そういえば俺さっきキムチ食ったかもしれない」

ゆかり「お願いだから黙って」

2019 San Francisco

裏返しの涙が君の背中を濡らしたね

それでも僕は君を待つよ

帰りのバスは28時に新宿発

会ってくれるなら電話をおくれ

僕の電話番号は「ゴロームレムレ(56-6060)」で4649DEATH

2020 Japan

時間は虚構であり、

時間は願望であり、

時間は信仰であり、

時間は欲望である。

時間をカルマという壮大かつ茶番な遊戯の側面として捉えるとするならば

その全ての仮説が鮮やかに輪郭を現すことを理解できるか、君は。

即ち、

時間とは稚拙な戯曲であったと言えよう。

2019 Japan

帰国した数日後、ようやくスーツケースを開けたのですが、着替えもお土産も、何もかもが蝶々になっていて、部屋中、彼(もしくは彼女)たちでいっぱいになりました。虫取り網で捕まえようとしたら「わたしたちのことはもうわすれて」と蝶々が口々に言うので、仕方なく窓を開けて、逃してやりました。彼ら(もしくは彼女たち、もしくはどちらでもない、もしくは存在しない者たち)は、故郷へと無事に帰れるのでしょうか。心配になった私は、ヨキィに祈りました。ヨキィが笑ったので、私は安心して眠ることができました。

2019 Japan

リチャードとブラックスプルースは無二の親友だったが、

リチャードが保証人になったことで2人の関係はあっけなく壊れた。

いつかまた、彼らはどこかで出会うだろう。

2人は群青色の糸で結ばれているのだから。

(リチャードが糸切り鋏を隠し持っているのはどうぞ内密に)

2018 Berkeley