2019,9,16 BIG ISLAND

バスを待つ時間も嫌いじゃない。駅で電車を待つ時間も、乗っている時間も。でも考えてみたら、若い頃はいつも自転車に乗っていた。どこに行くにも自転車。10km、20kmの距離なら平気で自転車で向かう。バスや電車で向かった方が早くて確実? いや、実は待ち時間や乗り換え時間を考えると、場所にもよるが案外自転車で向かうのと変わらなかったりする。それに、自分の足で漕いで目的地に向かっている方が「進んでいる」気がして好きだった。

山の上に住んでからは自転車を手放し、専らバスと電車移動。ずっと都会暮らしだった僕は、車をどうしても運転しなければいけない必要性も無かったし、今の山の上の暮らしも家の目の前がバス停だからさほど不便も感じなかった。でも、大好きな「凪のお暇」というドラマの中で、私なんて徒歩か自転車で十分です、と運転を拒む、万年ペーパードライバーの主人公の凪ちゃんに向かって、お隣さんがこんな事を言っていた。

「凪さん、徒歩でしか行けないところや自転車でしか行けないところがあるように、車でしか行けない場所があります。世界が広がるのを想像すると、胸が湧きませんか?」

その言葉は、「今で十分」「今で満足」と言いながらチャレンジしない理由とすり替えて、ごまかしていた自分に気付かされた。「世界が広がる」には最初の一歩が必要で、僕はその一歩からのらりくらり逃げていただけなのかもしれないな、なんて思った。

ハワイに来てから、ずっと運転をしている。昨日は久嶋君も合間に交代して運転してくれたが、基本的には僕が運転席に座るようにした。ハワイは道も広くて運転しやすいが、とにかくみんなスピードが速くてついていくのに必死だが、チャレンジの機会を逃すものか、と、食らいついている。今日は移動日。何時間も運転して、最終的にはプナ地区のジャングルに向かう。免許を取って18年間、先月の始めまでほぼ丸々、運転などしてこなかった人間が、だ。まだまだ怖さはあるが、自転車に乗って自分の足で目的地に向かっていたあの頃の感覚を思い出してもきていて、運転が楽しくなりつつあった。人が変化していくには、最初の一歩が大切だなぁ、と、しみじみ感じる。

朝早くにシンジさんとこの場所に別れを告げて、家を出る。シンジさんに「またおいでよ」と言ってもらえた事が嬉しかった。「またおいで」って嬉しい言葉だなぁ。さて、今日はハワイ島をぐるっと巡る。WaimeaからHonokaaを抜けてHiloに向かい、最終的にケイコさんの住むジャングルへ。今いる場所から真反対。もっと短いコースもあるが、僕たちはHonokaaや、途中のHonomという町のベーカリーにも寄りたかったからあえて遠回りして向かう。

後ろ髪ひかれつつKonaの町を後にし、車を飛ばして1時間(本当にものすごいスピードで飛ばしていく)。Honokaaに到着。車を降りると、あの映画「ホノカア・ボーイ」の世界が広がっていて、大興奮。わぁ~、わぁ~、とはしゃぎながら、2人で小さな商店街を散策する。朝が早かったからまだ町も静かで、見たいお店も閉まっていたのが残念だったが、またここを訪れる楽しみができたと思おう。チェックしていたアサイーボウルが美味しいらしいカフェで朝ごはん。いろいろトッピングしたアサイーボウルを2人で分けっこする。この旅はじめてのアサイーボウル。すごく美味しい。

ふと時計を見ると、なんともう10:00を過ぎていた。あんなに朝早く出たのに!! これはヤバイ! すぐに車に乗り込む。今日は11:00からHiloでチャネリングのセッションの予約を入れていた。もちろん、僕がする方ではなく、受ける方。せっかくハワイに行くんだから、ハワイ在住のヒーラーさんのスピリチュアルなセッションを受けてみたくて、良さそうな方を探して予約を入れたのだ。その方はハワイ島在住の日本人の女性で、もともとはカメラマンだったが、昨年のハワイ島の噴火で覚醒してセッションを始められたのだそう。東日本大震災をキッカケにこの仕事を始めた僕と境遇も似ている。HonokaaからHiloまではどう頑張ってもあと1時間はかかる。すでに10:20。とりあえずメールで遅れる旨を伝えて、急いでHiloへ向かう。途中、Honomの町に寄り道して、Mr. Ed’s Bakeryでお土産を買うつもりだったが、セッションが終わった後に改めて向かう事にした。

Hiloに近づくと海が見えてきた。そのままHiloの港を横目に、町の端っこにあるリリウオカラニ公園というなんとも言いづらい公園を目指す。指定された巨大なバニヤンツリーの木の下に着いたのは11:30。セラピストのユウコさんが待っていてくれた。ユウコさんはこのあと予定があるようで、時間も遅れていたので挨拶も早々に、早速セッションがスタートする。

僕たちは今どこに向かっているのか、今の僕たちに必要なメッセージは何なのか…。昨日のワンネス・ステーションのメッセージとも通じていたり、新たな発見もあったりして、このタイミングで受けられて良かった。自分だけの視点だとどうしても見えにくい事があるから、やはり別の方の意見は大事ですね。「鎌倉、すごく2人に合ってますよ」と言われたのが嬉しかった。

ユウコさんと別れて、リリウオカラニ公園をそのまま散歩する。何より、セッションを受けた場所の、この巨大なバニヤンツリーが圧巻。ザ・南国の植物。大きすぎて見上げてもてっぺんが見えない。全体像はいったいどうなってるんだろう。すごいねぇ、すごいねぇ、と言いながら写真を撮る。バニヤンツリーはハワイでも特別な木なのだそう。そりゃこんだけでかかったら特別やわ。公園を後にして、Hiloの町を少し散策する。Hiloの町は松浦弥太郎さんが雑誌で絶賛していて楽しみにしていたが、僕たちにはなんだかとても寂しそうな町に映った。もちろん、そこが郷愁やノスタルジーが感じられて良いのかもしれないけど(松浦さんもそう雑誌に書いていた)、なんだろう、昔、津波で1度全部を失った町だからかな。明るさがない、というか。曇り空の天気もあったんだろうけど。Honokaaもノスタルジーな町だったが、Honokaaの方が僕は好きだな。気になっていたカフェでランチを済ませて、早々に車で次の目的地へ向かう。時間に遅れそうでさっきは通り過ぎてしまったHonomの町へと道を引き返す。そこには、僕たちが楽しみにしていたジャム・パラダイスが待っている。

HonokaaからHiloに向かうハイウェイをスッと横道に逸れて、植物がワサワサした道を進む。本当にこんなところにあるのかな~、と不安に思い始めた頃、突然小さな商店街が現れる。その商店街の1番奥に、Mr. Ed’s Bakeryはあった。町のパン屋さん、という風情で、家族経営っぽいゆるさがある。店の名前からして、きっとエドさん一家が営んでいるのかな(真相は不明)。パンを売る部屋の隣には、いったい何種類あるのかわからないくらいのたくさんのジャムが並んでいた。バニヤンツリーに続く、本日2回目の圧巻。本当に、数がすごい。全て試食できるそうなので、気になる味を片っ端から味見していく。リリコイやココナッツ、バナナやパパイヤ、パイナップルなど、ハワイらしい果物を使ったジャムが特に気になる。いろいろ試食をして、最終的に僕は “Strawberry & Pineapple & Coconut” を、久嶋君は “Banana Butter” をチョイス。どちらもすごく美味しかった。もっとたくさん買いたかったが、ひと瓶が大きくて断念した。また次のお楽しみだ。

ジャムを選んでいる間にザァーっと天気雨が降っていたが、店を出る頃には止んでいた。空気が洗われて気持ちいい。さぁ、いよいよ、ハワイに来る目的でもあった、ケイコさんの場 “The village” へ向かう。完全なるジャングルの奥地へと車を進めていく。僕の短い運転人生、早くもハイライト。

次回、”The village” へ 。もしかすると、僕の人生にとってもハイライトなのではないか。そんな予感に満ちている。